調剤医療費が8兆円を突破~後発品シェアは85%に到達 厚生労働省発表
厚生労働省は、2023年度の調剤医療費(電算処理分)が前年度比5.5%増の8兆2678億円に達し、初めて8兆円を突破したと発表しました。また、2023年度末における後発医薬品の数量シェアは、前年度から1.5ポイント増加し、85.3%に達しました。 8月3日に公表されたデータによると、2023年度の調剤医療費は、薬剤料が5.5%増加して6兆円を超えるなど、全体で5.5%の伸びを示しました。特に「化学療法剤」の薬剤料は、新型コロナウイルスやインフルエンザ治療薬の影響もあり、8割近く増加しました。後発医薬品のシェアも85.3%に達し、前年から1.5ポイントの増加を見せています。 調剤医療費の内訳では、技術料が前年度比5.7%増の2兆2474億円、薬剤料が5.5%増の6兆0041億円となりました。処方箋1枚当たりの薬剤料は0.6%減少しましたが、処方箋の枚数が6.1%増加したため、全体の薬剤料は5.5%増加し、調剤医療費の増加に寄与しました。 技術料の内訳を見ると、調剤技術料が7.3%増の1兆1554億円、薬学管理料が4.1%増の1兆921億円となりました。処方箋1枚当たりの調剤医療費は0.5%減の9343円、技術料は0.4%減の2540円でした。 薬剤料に関しては、全体で0.6%減となり、6785円となりました。このうち、注射薬は6.9%増加して631円となった一方で、内服薬、頓服薬、外用薬、後発品は前年度から減少しました。注射薬のみが3年連続で前年より増加する傾向にあります。 薬効分類別に見ると、「化学療法剤」が前年度比78.8%増と大幅に増加し、「抗生物質製剤」が22.8%増、「生物学的製剤」が16.9%増、「呼吸器官用薬」が13.0%増と続きました。 後発医薬品の数量ベースの割合は、2023年度末時点で85.3%に達し、前年度から1.5ポイント上昇しました。この増加傾向は、前年度も同様に1.6ポイントの増加を記録しており、全体として上昇基調に変わりはないとされています。 都道府県別では、沖縄県が91.2%で最も高い後発品シェアを維持しており、東京都と徳島県が81.9%で最も低いシェアでした。シェアの伸び率では、大阪府が1.9ポイント、香川県と佐賀県が1.8ポイントでトップとなり、沖縄県と鹿児島県はそれぞれ0.9ポイント、1.0ポイントと最も低い伸び率となりました。 また、概算医療費は前年度比2.9%増の47兆3000億円となり、2000年度の集計開始以来、最高額を記録しました。厚労省は、「医療費の伸びは通常の水準に戻りつつあるが、コロナの影響が完全に消えたわけではなく、インフルエンザなど他の感染症の影響も含め、今後も医療費の動向を注視していく必要がある」とコメントしています。
宮城県薬剤師会と県が「門番役」薬剤師を養成する初の研修会を開催
宮城県薬剤師会と宮城県は、市販薬の乱用を防ぐための「ゲートキーパー」役となる薬剤師の養成に本格的に取り組み始めました。8月29日、仙台市内で初めて薬物乱用防止に関するゲートキーパー養成研修会を開催し、学校薬剤師、保健所職員、薬学生など86名が参加しました。この研修会は、宮城県薬剤師会としても初の試みであり、全国的にも先進的な取り組みとされています。 若年層による市販薬のオーバードーズ(OD)が社会問題化する中、宮城県は今年度から5年間の「第6期 宮城県薬物乱用対策推進計画」を策定し、薬剤師や行政関係者が情報を共有し、乱用防止に向けたゲートキーパーの育成を基本目標に掲げています。 宮城県薬剤師会の加茂雅行副会長は、「これまで薬物乱用防止の研修会は毎年行ってきましたが、特に市販薬の乱用に対応するゲートキーパー養成のための研修会は今回が初めてです」と説明。その背景には、違法薬物に加えて、近年増加している市販薬の乱用への対応が急務であるという認識がありました。 研修会では、宮城県薬剤師会の佐々木孝雄顧問が、薬物乱用関連の精神疾患患者が最初に使用した薬物として市販薬を挙げるケースが増えていることを指摘。また、違法薬物に詳しい警察官と役割分担しつつ、薬剤師が市販薬の乱用防止に関与する重要性を強調しました。 研修会では、一部の保護者や学校職員が「濫用の恐れがある医薬品」に関する具体的な情報提供に抵抗を示すケースがあるため、情報の伝達方法について事前に協議し、共通認識を持つことの重要性が指摘されました。 さらに、日本薬剤師会の富永孝治常務理事は、日本の薬物乱用防止教育がG7諸国の中でも成功していることを強調し、学校薬剤師による一次予防と、薬局薬剤師による販売時のチェックを通じた二次予防の重要性を訴えました。 今後、宮城県薬剤師会は研修会を年1回の頻度で継続し、市販薬乱用防止のための活動をさらに強化する方針です。また、市や町の祭りなどのイベントでの「お薬相談」を通じて、市販薬の乱用防止を呼びかけることも計画しています。